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優性思想が何でダメなのか-他人ごとじゃないんですよネ

障害に関して

半年くらい前に、ある有名人がネット配信で

「優性思想の何が悪いんだ!」

と言っていて、えらくショックを受けました。

でも、その話の内容は、

「容姿端麗で才覚のある相手との間に子孫を残したい、と思うことの何が悪いんだ」

という意味での発言だったんですよね。

…なんというか、優性思想ということばの意味が伝わっていないんだな、と感じました。

その人はカルチャーの天辺を走り続けている人だから、底辺と見做された者から殺処分されていく“優性思想”という概念とは無縁の生活を送っているのだろうと思います。

身近ではないものに無関心になってしまうのは、ある程度仕方のないことなのかもしれないけれど、生命に直結する話が、こうも伝わっていない現実を見て、空恐ろしくなりました。

その配信を見ている人達のコメントでも「そうだそうだ、何が悪い!」というものがいくつもあって、大切な情報がしっかりと伝わらない怖さを感じたんですよね。

教育機会を得られない立場の人であれば、単に知らなかった、ということもあると思うのですが、そうでもない人たちが全く知らない訳ではないはずなのに、関心が無ければ話の内容は伝わらないんですよねぇ。(高学歴が売りのYouTuberさんが、社会保障の意味が全くわかっていなかったり…)

津久井やまゆり園の事件も、旧優生保護法の人権侵害裁判も、結構報道されていたはずなのに、興味の無い人には「伝わらない」んですよ…。

この話題を「他人ごと」だと無視してしまうのは、無視をしたその人も含めた「生き物としての人間」全体の、未来に対する無視になってしまうことを、どうやったら伝えられるのでしょう。


「イケてる相手との間に子孫を作りたい」という感情は、単純に欲望であって、思想じゃ無いです。

欲望は、ちゃんと手段を選んで達成するなら、それはそれで良い事です。

ただ、その欲望を効率よく達成するためのシステムを作り、このシステムに乗ることが善であるという価値観を喧伝する「思想」になるのよね。

極端な例で、ナチスのレーベンスボルンなんてものもあったけれど、これを羨ましがるようなおバカは、いないよねぇ?(物凄く気持ちの悪い「思想の暴走」の一例です⇩)

レーベンスボルン - Wikipedia

前出のネット配信では、デザイナーズベビーの話題に触れていたのですが、血統で選り分けた精子や卵子を売買して子供を作る、って、いわばマイルド・レーベンスボルンですよ。(というか、子供を掛け合わせた家畜扱いしてどうする気なんだろうか?)

ナチス時代の価値観は、ヒトラー好みの金髪碧眼ガッシリ体型なのだけれど、どんな資質が好まれるかは文化・時代で変わるものなんですよね。

独裁者一人の好みであれ、無意識の合意であれ、「誰か(人間が)決めた価値観」なんですよ。

人間の好み=価値観が、自然の造形より優れることなんてあり得るのでしょうか???


上記の「優秀な遺伝子を増やせ」というのと対になるのが「劣等な遺伝子を消せ」という思想です。

優性思想は対になっているんですよ。

そしてこの「優秀・劣等」という価値基準も、いったい誰が決めるのでしょう。(「自分は神だ!」という狂気に駆られなければ決められない、と思いますよ)

この価値基準=思想って、「モテ」という素直な欲望「経済効率」というもっともらしさと直結させやすいから、上手く煽られると簡単に乗せられてしまう。

だからこそ、簡単に乗せられないように、自身の感覚でしっかり判断しないと、怖いことになるんですよね。

出生前診断の話題にしても、安楽死の話題にしても、生命に関わる重い話題は、気楽にどこでもしゃべれるものではないのだけれど、できる限り情報を集めて自分自身で考えないと、怖いですよ。

よく、出生前診断に反対意見を述べる人に「今生きている障害者を殺せと言っている訳ではないのに、なんで反対するんだ?」という意見が出ます。

野生動物なら障害を持った仔は育たずに死んでしまうし、弱った高齢個体も簡単に死んでしまうのだろうけれど、人間は野生動物じゃないんですよ。

面倒くさくても、ハンデがあっても生きられる社会を作るのが、人間ならではの「生き方」なんですよね。

ハンデがあるから生きられない、生きなくていい、というのは、人間性の放棄になってしまうんですよ。

それでも、人間が全てをコントロールできる訳ではない。

人間は創造主ではなくて、自然の被造物ですから。

このバランス感覚を失うと、おかしな優性思想に囚われてしまうのだと思うんですよね。


「経済効率」と「モテ」

この辺りの欲望や恐怖を煽る話は、気を付けて考えないと、簡単に変な方向へ連れていかれてしまう。

悪意など全くなく、真面目に考えているのに、いつの間にかおかしな方向へ行きやすいんですよ。

生き死にに関連する話を、特に経済や欲に絡めて議論しているときは、足元をしっかり見て、よくよく眉毛にツバつけて、聞くのが安全です。

死んでいく人、これから産まれる人、の話は、今生きている全ての人に直結する話だから、決して他人ごとにしないで、自分の足で頭で確かめて、判断してくださいね。


ブログ筆者  鈴木紗々夜  https://amzn.to/3MCIgqY
障害者就労で感じた無意識の差別、能力主義の不都合、制度の矛盾…等々…本人の体験から感じたこと、改善したいこと、これからの社会へ願うこと、などを書いています。ご興味がありましたら、どうぞご一読ください。よろしくお願いいたします。
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